R3.2.2 「法制審民法・不動産登記法部会」の改正要綱案について

 相続登記の義務化などのルール改正を検討していた法制審議会民法・不動産登記部会が令和3年2月2日、「民法・不動産登記法(所有者不明土地関係)の改正等に関する要綱案」を発表しました。

 当事務所では、この要綱案が出る前の中間試案の段階でパブリックコメント等を出しておりましたが、相続に関係する主な改正点をまとめます。

所在等不明共有者の持分取得制度

 相続の開始後、何らかの事情で遺産分割協議がされないまま、長期にわたり放置されて、他の共有者がどこにいるかわからなくなっている不動産について、現在は、家庭裁判所に不在者財産管理人の選任を申立て、不在者財産管理人との間で遺産分割協議を行わない限り、相続登記をすることができません。

 今回の改正では、相続開始から10年が経過し、所在がわからなくなった共有者がいる場合に、裁判所に申し立てることにより、その相続人が相続した持分を、共有者の持分割合に応じて取得させることができるようになります。(p5-7)

所有者不明の土地・建物の管理人制度

 土地・建物の所有者がだれかわからない、又は、どこにいるか所在がわからない場合には、利害関係人の請求で、裁判所が所有者不明土地・建物の管理人を選任し、所有者に代わって管理させることができるようになります。なお、所有者不明土地管理人、建物管理人が選任された場合は、その不動産に裁判所により登記がされることになっています。(p7-11)

管理不全土地・建物の管理人制度

 土地・建物の所有者がだれで、どこに住んでいるかわかっているものの、その人が、土地や建物を適切に管理せず、近隣に被害を与えているような場合(ゴミ屋敷等)に、利害関係者が裁判所に申し立てることにより、所有者に代わって土地・建物を管理する管理人を選任してもらうことができます。(P11-13)

 ※マンションの各部屋などの区分建物の場合は、管理組合が対応できることから、管理不全建物管理人の制度の対象外になっています。

相続登記の義務化

 不動産の所有者に相続が開始し、相続財産を取得した相続人は「相続の開始があったこと」「当該所有権を取得したこと」を知ったときから3年以内に相続を原因とした所有権移転登記をする義務が課せられます。

 法定相続人以外の第三者が遺言によって、不動産を取得した場合も、遺贈を原因として所有権移転の登記をする義務が課せられます。

 「正当な理由なく」相続登記の申請を怠った場合は、10万円以下の過料を支払わなくてはなりません。(P16 )

相続人申告登記の創設

 相続登記義務化に伴う措置として、正式の相続登記ではないものの、義務を免れるための「相続人申告登記」という制度が設けられます。

 相続登記を申請するためには、亡くなった所有権登記名義人(被相続人)の生まれてから亡くなるまでの戸籍すべてを集め、法定相続人がだれかを確定する必要があります。この作業に数か月は時間がかかること、それから遺産分割協議に時間がかかることから、とりあえず、「相続人申告」をしておいて、10万円以下の過料を免れるなどの使用法が考えられます。

 ただし、「相続人申告」の後、遺産分割協議がまとまった場合は、遺産分割がまとまってから「3年以内」にやはり、相続登記を申請する義務が課せられますので要注意です。(P17)

遺贈の登記・法定相続後の登記の簡略化

 被相続人の遺言書で、遺贈をした場合、現在の不動産登記の制度では、遺言書で遺言執行者を指定していなければ、相続人全員が協力しなければ、遺贈の登記をすることができません。改正後は、遺贈で財産を受け取った受遺者の単独で申請できるようになります。

 また、相続登記の義務を果たすために、とりあえず、法定相続分で登記をしておいて、遺産分割協議や遺産分割調停がまとまったあとで登記をする場合、現在の制度では、遺産分割協議により不動産の持分を失うことになった相続人と、不動産の持分を得ることになる相続人が共同で登記を申請しなければなりませんが、これも、財産を得ることになった相続人が単独で申請できるようになります。(P18)

法務局による死亡情報の符号の表示

 自治体が管理する住民基本台帳の情報などにより、法務局が所有権の名義人の死亡情報を把握した場合、これを不動産の登記簿に記載することができるようになります。(p18)

 また、この制度を有効なものとするために、新たに不動産を取得して登記名義人になる人は、登記の申請の際に、生年月日を法務局に提供しなければならなくなります。(生年月日は登記簿には記載されない非公開情報として扱われます)

 この情報をもとに、法務局は住民基本台帳ネットワークを通じて、所有者の情報を検索することができるようになります。

 ※戸籍上の死亡日は、通常であれば「〇年〇月〇日死亡」と記載されますが、災害や事件事故に巻き込まれたり、不審死を遂げた場合などは、「〇年〇月〇日ごろ死亡」とか「〇年〇月日付不詳死亡」「推定〇年〇月〇日死亡」等と記載され、見る人が見れば、何かあったんだなとわかってしまいます。当事務所は、中間試案の段階で、死亡情報は他人に把握されたくない極めてセンシティブな情報であるため、人権に配慮した制度となるよう意見書を提出しております。今後、どのような制度になるか注視していきます。

氏名・住所の変更登記の義務化

 所有者に氏名や住所の変更があった場合、その変更があったときから2年以内に変更の登記を申請しなければならなくなります。「正当な理由がない」のに、その義務を怠った場合は、5年以下の過料が処せられます。(P18 )

 前項で述べた通り、法務局は住民基本台帳システムや商業・法人登記システムから、氏名(名称)・住所の変更を把握することができるため、変更を把握すると、法務局は職権で、変更登記を行います。会社などの法人ではなく、自然人が所有者の場合、住所や氏名の変更は、申出がある場合に限られます。

 例えば、婚姻や離婚で氏が変わったり、単身赴任で引っ越しが頻繁にある、というような方は、申出をしてしまうと勝手に変更がされてしまうため、申出をするかどうかは十分に検討した方がよいでしょう。

外国居住者の連絡先の登記

 日本国籍を持っていても外国に長期滞在しているような方の場合、現在のシステムでは外国における住所を把握することができません。そのため、不動産の所有者が国内に住所を有さなくなったときは、国内における連絡先の氏名・住所を登記することになります。なお、連絡先の人が住所や氏名を変更することになったときは、連絡先の人が単独で変更を申請することができます。(P20)

土地所有権の国庫帰属承認の制度

 土地を相続で取得した場合に、法務大臣の承認を経て、その土地を国に帰属させることができる制度が導入されます。(P23)

 ただし、この制度を利用するには、以下の条件に該当する土地でなりません。「更地で隣との境界での争いがない」というような土地は、おそらく駐車場などで暫定利用している空き地や原っぱ等だと思われますが、この制度を利用したいニーズは、バブルの頃に買ってしまった山林とか原野などだったりだと思うので、かなり利用は難しいと思います。

  • 土地の上に建物が存在しない
  • 担保権や地上権など他人の権利が設定されていない
  • 土壌汚染がされていない
  • 土地の境界が明らかで、隣地などと紛争がない
  • 崖などがあって、管理に多額の費用や労力を要する土地ではない
  • 土地の管理・処分の邪魔になる工作物や樹木などがない
  • 除去しなければ利用できないものが埋まっていない

 以上、令和3年2月2日に公開された法制審議会民法・不動産登記部会の「改正要綱案」について概要をまとめました。

 本要綱案については、2月10日に上川陽子法務大臣に答申が出され、改正法案が政府より今国会(1月18日~6月16日までの150日間)に提出される見込みです。直近の債権法改正では改正から施行まで3年かかっておりますので、順調に進んでも、実際に改正法が適用されるのは、2025年頃ではないかと予想されます。

 当事務所では、今後も民法・不動産登記法についての情報を提供してまいります。