韓国籍の方の相続放棄について

亡くなった方が韓国の国籍(在日の方やニューカマーの方)の方で、相続人の方が相続放棄をする場合には、裁判所に相続放棄を申し出ることが可能な期間に注意が必要です。

相続放棄は、亡くなってから3か月以内

日本の法律では、相続放棄が可能な期間について、「自己のために相続の開始があったことを知った時から三箇月以内」(民法第915条)と定めています。韓国の法律でも、日本の法律と同様に「相続の開始があったことを知った日から3カ月以内」(民法1019条第1項)というよく似た文言になっているのですが、実は、この「自己のために」という文言があるかないかで、日本と韓国で、相続放棄が可能な時期に大きな違いがあります。

日本の場合は、「自己のために」ですので、仮に亡くなった後、何年かしてから「実は大きな借金がありました」ということがわかっても相続放棄をすることができます。ところが、韓国の場合は、この「自己のために」という文言がありません。ですので、「相続の開始があったことを知った日」つまり、「亡くなった」ことを知り、「自分が相続人であること」を知った日から3カ月以内に手続きをしないと、相続放棄ができなくなってしまいます。

この日本と韓国の法律の違いが大きな違いを生むことがあります。先日、私が関わった案件では、別の専門家にご依頼されたご親族の方が、相続放棄の手続きを裁判所でしたにも関わらず、韓国の法律で認められている相続放棄の期間をすぎてしまっていたということで、受理されないということがありました。

さいわい、私にご相談された相続人の方との間で話がうまくまとまり、事なきを得たのですが、これが大きな借金があったというケースで、相続放棄ができなかったということになると、破産などの選択肢も考えなくてはいけなくなります。

韓国では、この相続放棄ができる期間について、最高裁まで争われており、「相続財産の有無を知った日」ではない、相続財産の有無にかかわらず、相続放棄ができる期間はスタートするという判決が出ております。

もし、韓国の国籍の方で、ご親族がお亡くなりになったということを知ったら、自分が相続人になるのかどうか、お調べください。債務があるかどうかにかかわらず、相続放棄や限定承認などの手続きをしなければならない場合がございますので、ご注意ください。

お困りの場合は、アデモス事務所までご相談ください。

[大法院 1969. 4. 22.  69タ232, 判決] 

【判示事項】
 相続の開始があったことを知った日とは、相続開始の原因となる事実の発生を知り、また、それにより自分が相続人になったことを知った日をいう。

【判決要旨】

 相続の開始があったことを知った日とは、相続開始の原因となる事実の発生を知り、又はこれにより自己が相続人になったことを知った日をいう。

https://www.law.go.kr/LSW/precInfoP.do?mode=0&evtNo=69%EB%8B%A4232

【판시사항】

상속개시 있음을 안날이라 함은 상속개시의 원인되는 사실의 발생을 알고 또 이로써 자기가 상속인이 되었음을 안날을 말한다.

【판결요지】

상속개시 있음을 안 날이라 함은 상속개시의 원인되는 사실의 발생을 알고 또 이로써 자기가 상속인이 되었음을 안 날을 말한다.

【참조조문】

민법 제1019조 1항

[大法院 1986. 4. 22. 86ス10, 決定]

【判事事項】

民法第1019条第1項の相続の開始があったことを知った日の意味

【判決要旨】

民法第1019条第1項の規定により、財産相続人は相続開始のあることを知った日から3カ月内に相続放棄をすることができるものであり、ここで、相続開始があったことを知った日とは、相続開始の原因である事実の発生をしることにより、自らが相続人になったことを知った日をいうものであり、相続財産の有無を知った日を意味するものではない。

https://www.law.go.kr/LSW/precInfoP.do?precSeq=101732#AJAX

【판시사항】

민법 제1019조 제1항 소정의 상속개시 있음을 안 날의 의미

【판결요지】

민법 제1019조 제1항의 규정에 의하여 재산상속인은 상속개시 있음을 안 날로부터 3월내에 상속포기를 할 수 있는 것이고 여기에서 상속개시 있음을 안 날이라 함은 상속개시의 원인되는 사실의 발생을 알므로써 자기가 상속인이 되었음을 안 날을 말하는 것이며, 상속재산의 유무를 안 날을 뜻하는 것은 아니다.

【참조조문】

민법 제1019조 제1항

【참조판례】


대법원 1969.4.22 선고 69다232 판결
,
1974.11.26 선고 74다163 판결