【韓国】ク・ハラ法の内容と影響について 

 韓国の相続に関する民法改正(きっかけとなった歌手の名前から「ク・ハラ法」と呼ばれています)により、2026年1月1日から被相続人が公正証書遺言を残すことにより、扶養義務を果たさなかった直系尊属の相続権を喪失させる制度が始まります。

 元々、財産を残して先に子が亡くなった場合、養育義務を果たさなかった親に対して、相続権を認めないことが制度の目的ですので、遺留分の請求も認められないことになります。

 詳しくは下記の条文をご参照ください。

民法第1004条の2(相続権の喪失宣告)

①被相続人は、相続人となる者が被相続人の直系尊属として次の各号のいずれかに該当する場合には、第1068条により公正証書による遺言で相続権の喪失の意思を表示することができる。その場合は、遺言執行者は家庭裁判所にその者の相続権の喪失を請求しなければならない。

1.被相続による扶養義務(未成年者に対する扶養義務に限定する)を重大に違反した場合

2.被相続人又は配偶者や被相続人の直系卑属に重大な犯罪行為(第1004条の場合を除く)をしたり、その他、不当な待遇をした場合

②第1項の遺言により相続権の喪失の対象となる者は遺言執行者となることができない

③第1項による遺言がなかった場合、共同相続人は被相続人の直系尊属で次の各号の自由がある者が相続人となったことをしった日から6か月以内に家庭裁判所にその者の相続権の喪失を請求することができる。

1.被相続人に対する扶養の義務(未成年者に対する扶養義務に限定する)を重大に違反した場合

2.被相続人に重大な犯罪行為(第1004条の場合は除く)をしたり、その他、不当な待遇をした場合

④第3項の請求をすることができる共同相続人がないか、全ての共同相続人に第3項各号の自由がある場合には相続権喪失宣告の確定により相続人となる者がこれを請求することができる。

⑤家庭裁判所は、相続権の喪失を請求する原因となる事由の経緯と程度、相続人と被相続人の関係、相続財産の規模と形成過程及びその他の事情を創造的に考慮し、第1項、第3項又は第4項による請求を認容し、又は棄却することができる。

⑥相続開始後に相続権の喪失の宣告が確定した場合は、その宣告を受けた者は、相続が開始したときに遡及して、相続権を喪失する。ただし、これにより当該の宣告が確定する前に取得した第3者の権利を害することはできない。

⑦家庭裁判所は第1項、第3項又は第4項による相続権喪失の請求を受けた場合、利害関係人又は検事の請求により、相続財産管理人を選任し、その他相続財産の保存及び管理に必要な処分を命じることができる。

⑧家庭裁判所が第7項により、相続財産管理人を選任する場合、相続財産管理人の職務、権限、担保提供及び報酬などに関して第24条から第26条までを準用する。

[本条新設 2024年9月20日] [施行日:2026年1月1日]

 近年、韓国では、これまでの相続法制の見直しを求めるようなできごとがあいついでおり、これまで、兄弟姉妹に認められていた遺留分についても、憲法裁判の結果、日本と同様に認められないことになりました。
 日本で暮らす韓国籍の方は相続の際に、原則として韓国法が適用されます。遺言書で指定することにより日本法で相続手続きをすることも認められておりますが、韓国と日本では、法定相続人の範囲も法定相続分も規定が異なっています。実際に、相続が起きてから問題が発覚するケースもたくさんあります。
 あらかじめ、相続の際に必要となる戸籍等を集めておいて、対策を検討することが不可欠です。