- 2021年3月5日
遺言・成年後見についてのよくある質問
最大の違いは、実際に遺言書を使う場面になったときの手続きです。
公証役場で遺言書を作成した場合(「公正証書遺言」といいます。)、公証役場に遺言書の原本が保管されており、遺言書を作成したときにもらった書類をなくしてしまっても、遺言書の謄本を発行してもらうことで手続きが可能です。また、家庭裁判所での手続きが不要です。
自分で書く遺言書(「自筆証書遺言」といいます。)の場合は、家庭裁判所で、「検認」という手続きが必要になります。この手続きには、亡くなった方の生まれてから死亡するまでの戸籍すべてが必要で、申立までに時間を要します。また、公正証書遺言と異なり、原本はご自分で作成した一通しかないため、しっかりと保管しておき、ご自身が亡くなった後に相続人の方が使えるように、その場所を教えておくなどの対策が必要です。また、内容についても、自分の氏名、日付、内容を自筆で書き、捺印をしておかないと無効になってしまいます。
これらの欠点を埋める制度として、2020年に法務局で自筆証書遺言を保管する制度が誕生しました。まだ、できて時間がたっておらず、あまり活用されておりません。
司法書士は、不動産の相続登記に関する唯一の専門家であり、日常の業務の中で、多数の相続登記を受任しています。その中には、遺言書があったけれども、相続の手続きには残念ながら使えなかったというものが、ございます。
相続財産の中で、かなりの割合を占める不動産について、確実に相続の手続きができるようにする、というのは遺言書を作っておく動機の一つではないでしょうか?。私たちも実際にそのような相談を多数受けますが、弁護士や税理士など協力関係にある他の士業の専門家からも、遺言書の作成にあたり、不動産の部分については司法書士に確認したいということで、多数、事前相談をされております。
成年後見制度は、認知症によって判断能力が低下したご高齢者の代理人として、代わりに財産を管理したり、福祉サービス契約を締結したりすることを通じて、ご本人が従前と変わらず健康に生活ができるよう支援するという制度で、成年後見人は裁判所の監督を受けて職務を行います。
身寄りのないご高齢者の方が、認知症になって、財産の管理ができなくなり、必要な福祉サービスを受けられない状況になってしまったときに、成年後見制度を利用することで、特別養護老人ホームに入所したり、在宅のサービスを受けることができるようになり、生活状況の改善をはかることができます。
ただ、成年後見人はご本人の預貯金などを管理する権限を与えられる一方、裁判所の監督は不十分であるため、専門職なども含めて過去に横領事件が発生してしまったこと、いったん成年後見制度の利用を開始すると途中でなかなかやめられないこと、親族が成年後見人になろうとしても財産状況によってはなることができず、専門職が成年後見人になると費用が発生してしまうこと、などがデメリットとして指摘されています。
任意後見制度は、上で触れた「成年後見制度」(「法定後見」といいます。)と異なり、ご本人が自らの意思で、代理人となる人をあらかじめ、定めておくことができます。
法定後見は、ご本人が認知症により判断能力が低下してしまった段階で、利用を検討することになるため、ご本人が代理人を決めることが難しい状況になっているのに対し、「任意後見」は、元気なうちから、財産管理の方法を決めておけるという点で、法定後見にないメリットがあります。また、法定後見と異なり、自分が元気なうちから、財産管理をまかせるほか、亡くなったときの葬儀や相続の手続きについても、あらかじめ契約を締結しておくことで備えをすることができます。
一方で、法定後見と違い、裁判所の監督が入りにくいという点、法定後見よりも初期費用が高いという点がデメリットとして挙げられます。そのため、利用に際しては、納得できる代理人を選び、費用についてもきちんと説明してもらう、ということが必要です。