韓国相続の手続きの流れと必要書類
韓国籍の方が亡くなったとき、日本と韓国の両方で手続きが必要になります。
初動から不動産の名義変更や預貯金口座の解約まで、全体の流れと日韓それぞれで必要になる手続きの流れについて解説しました。
「まず何をすればいいの?」「韓国の書類はどこで取るの?」
——日本と韓国をまたぐ相続の手続きは、進める順番や必要になる書類を押さえれば、解決の道筋が見通せます。標準的なケースの流れに沿ってご説明します。
3-1. 日韓相続の全体フロー(標準ケース)
まずは全体フローをご覧ください。
日韓相続では、日本側と韓国側の手続きが並行して進み、それぞれに期限があります。
この表で大きな流れをつかんでから、各ステップの詳細をご覧ください。
| Phase | 時期の目安 | 主なステップ |
|---|---|---|
| Phase 1 初動 | 〜1ヶ月 | 日本の役所への死亡届 韓国領事館への死亡申告(韓国籍の場合) 遺言書の有無確認 |
| Phase 2 財産調査 | 1〜3ヶ月 | 相続人の確定(日本戸籍+韓国家族関係証明書) 日本側:銀行照会・不動産登記確認・保険確認 韓国側:銀行照会・不動産登記確認 財産目録の作成 |
| Phase 3 遺産分割協議 | 3〜4ヶ月 | 相続人全員による協議 遺産分割協議書の作成(韓国側に出す場合は韓国語で作成または翻訳) 印鑑証明等の収集 |
| Phase 4 名義変更・解約 | 3〜6ヶ月 | 日本:不動産登記・銀行解約・保険請求 韓国:所有権移転登記・銀行解約 相続税申告(日本10ヶ月・韓国6ヶ月) |
① 自治体での死亡届の手続き
ご家族が亡くなったとき、最初にするのは葬儀会社へのご連絡です。ご葬儀のために、まず病院で死亡診断書を受け取り、葬儀会社を通じて自治体に死亡届を提出します。これは故人がどの国籍であっても変わりません。
② 駐日大使館・領事館での死亡申告
故人が日本で暮らす韓国籍の方の場合、駐日韓国大使館または領事館へ「死亡申告」を行う必要があります。これは韓国の家族関係登録簿に故人の死亡情報を記録するための手続きです。
日本人の場合は、死亡後に自治体で発行される除籍謄本を使って相続手続きをしますが、外国人には日本の戸籍がありません。
韓国籍の方の場合は、家族関係登録簿に基づいて発行される基本証明書や家族関係証明書などの書類が必要になります。
死亡申告のために必要な書類(例)
- 死亡申告書
- 故人の家族関係証明書・基本証明書※亡くなった方が兄弟姉妹の場合は、故人の家族関係証明書等を取得できないため、関係がわかる書類として、兄弟姉妹との関係がわかるご自身の除籍謄本を取得します。
- 日本の市区町村役場で発行された死亡届の記載事項証明書(死亡診断書を含む)
- 上記の翻訳文※韓国の死亡申告書には死亡日時・死亡原因などの記載欄があり、死亡診断書の内容と一致している必要があります。死亡届の部分だけでなく、死亡診断書の翻訳も必要です。
- 申告人の身分を証明する書類(マイナンバーカード・在留カード・特別永住者証明書またはパスポート)
- 故人の身分を証明する書類(パスポート・在留カード・特別永住者証など)
手続きの注意点
- 死亡申告は原則として死亡後1ヶ月以内に行う必要があります。
- 一定期間が経過した後は、故人の住民票の除票や在外国民登録簿謄本、申告人の住民票が必要です(日本で発行された書類はすべて3ヶ月以内のもの)。
- 提出書類は原本と写しの両方が必要になる場合があります。
- 韓国語への翻訳が必要となる書類もあります。
※韓国籍の配偶者が亡くなった場合の死亡申告では、日本人配偶者の方の戸籍を提出します。配偶者欄に亡くなった配偶者の記載と死亡の記載があるかを確認します。
③ 法定相続人の確定
死亡申告を大使館の領事部や領事館で行うと、本国へデータと書類が送られます。
申告時にメールアドレスを記載しておくと、本国で受理されたかどうかの連絡が届きます。
おおむね書類提出から3週間〜1ヶ月で家族関係登録簿への記載が終わり、死亡情報が記録された家族関係証明書や基本証明書が発行されます。
相続人の確定に必要な書類
- 故人の基本証明書・家族関係証明書・婚姻関係証明書(いずれも相続に使うため「詳細」で申請)
- 故人の除籍謄本(出生から2008年までのもの)
- 相続人の基本証明書・家族関係証明書
2008年より前の記録は戸籍に記録されています。現在の家族関係登録簿の制度ができたとき、これらはすべて閉鎖され「除籍謄本」という扱いになりました。除籍謄本の取得には、本籍地にあたる登録基準地の情報のほか、戸主(戸籍の筆頭に掲載されている人)の情報が必要です。戸主は父・祖父のほか、叔父や兄弟の場合もあります。不明な場合は、わかる範囲で父や祖父の氏名を記載して取得してください。
韓国籍の方の証明書の種類(日本の戸籍抄本にあたるもの)
- 家族関係証明書(両親・配偶者・子の情報)
- 基本証明書(個人の出生・死亡・国籍取得/喪失などの情報)
- 婚姻関係証明書(婚姻・離婚関係の情報)
- 入養関係証明書(養子縁組・離縁関係の情報)
- 親養子入養関係証明書(親養子縁組・離縁関係の情報)
※韓国内の財産の相続手続きを行う場合は入養関係証明書・親養子入養関係証明書が必要になりますが、入養関係証明書は財産の存在を証明する書類の原本(通帳や登記事項証明書など)を持参しないと発行されません。
領事館で家族関係証明書類を発行する際の手続き
- 申請人の写真付き身分証明書(原本およびコピー)
- 代理人の場合は委任状
- 代理人が申請する場合は、委任者の写真付き身分証明書の写し(写真付き身分証明書がない場合は、委任状に実印で捺印し印鑑証明書を添付)
※委任状は原本を提出するため、複数枚用意しておくとよいでしょう。
※帰化した方が申請する場合は、韓国側の戸籍記録と申請人の関係を確認する必要があるため、帰化の記録があり帰化当時の氏名が確認できる戸籍謄本・除籍謄本が必要です(この書類も翻訳が必要)。
※弁護士・司法書士などの法律専門家が東京の領事部で代理取得する場合は、事前予約が必要です。
※本籍地(登録基準地)が不明な場合は、外国人登録原票の写しの交付請求が必要になります。
④ 日本の戸籍・韓国の証明書類の翻訳(アポスティーユ)
韓国に財産があり韓国内で手続きをする場合、日本の戸籍等をそのまま提出することはできません。日本の自治体が発行した公式文書であることを証明するため、外務省にアポスティーユの申請を行います。この手続きにはおおむね1週間程度かかります。アポスティーユが付与された原本および翻訳文を韓国側に提出します。
※多くの場合は翻訳文をそのまま提出すればよいのですが、提出先によっては翻訳文の公証を求められることがあります。東京や大阪などの公証役場では、公証人がアポスティーユを付与した形で認証してもらえます。
⑤ 特別代理人の選任の申し立て
相続人に未成年者がいる場合、遺産分割協議は未成年者とその親権者(法定代理人)が双方の立場に立つことになり、利益相反行為となります。この場合、未成年者のために家庭裁判所へ特別代理人の選任を申し立てる必要があります。
韓国と日本では、成人年齢が違います。日本では満18歳で成人になりますが、韓国では満19歳が成人年齢です。相続人が韓国籍の場合、日本の法律でも韓国のルールにしたがって成人かどうかを判定します。したがって、日本で成人年齢となる18歳の方の場合でも、韓国籍の場合は、特別代理人の選任が必要になることがあります。
※例外として、契約の両当事者がそろって日本国内で契約をする場合は、日本の法律に従って18歳以上かどうかで判断すればよいのですが、相続の場面ではこの例外規定は適用できません。
申し立ての条件
- 未成年者とその親権者が相続人となる場合
- 親権者が複数(例:父と母)いる場合でも、未成年者と協議する親権者がいるときは利益相反となります
手続きの流れ
- 家庭裁判所に特別代理人選任の申立書を提出します
- 申立書には、申立人・相手方(未成年者)・候補者の情報、利益相反行為となる具体的な内容などを記載します
- 必要書類(戸籍謄本・住民票・遺産目録など)を添付します
※特別代理人は、通常、親族以外の第三者が選任されることが多いです。選任された特別代理人は、未成年者の利益のために遺産分割協議に参加し、合意形成を行います。
⑥ 遺産分割協議
遺言書がない場合、法定相続人全員で遺産の分け方を話し合い(遺産分割協議)、全員の合意に基づいて遺産分割協議書を作成します。
故人が韓国籍の場合、韓国の法律に基づいて相続人の順位や相続割合が決まり、法定相続分や遺留分の範囲にも違いがあります。その点を確認し、納得のいくように協議を進めてください。
遺産分割協議書の作成
- 協議がまとまったら、合意内容を明確に記載した遺産分割協議書を作成し、相続人全員が署名捺印します
- この協議書は、不動産の名義変更や預貯金の解約などの手続きに必要です
- 遺産分割協議書には実印で捺印し、印鑑証明書を添付します
韓国の財産を相続する場合、日本国籍の方は遺産分割協議書に日本の役所で発行した印鑑証明書を添付し実印で捺印すればよいのですが、韓国籍の相続人の方は、必ず韓国大使館・領事館で遺産分割協議書に領事認証を受ける必要があります。その際、印鑑証明書の代わりに、日本国内での住所を証明する在外国民登録簿謄本が必要になりますので、事前にご確認ください。
※相続人の中に連絡が取れない・行方不明の方がいる場合や、協議がまとまらない場合は、家庭裁判所に遺産分割調停または審判を申し立てる必要があります。
⑦ 預貯金の解約(日本)
故人の預貯金口座は、金融機関に死亡の連絡をした時点で凍結され、引き出しができなくなります。凍結後に相続人が預貯金を引き出したり、定期預金を解約したり、名義変更したりするには、金融機関所定の手続きが必要です。
必要な書類(例)
- 故人の死亡が確認できる公的書類(死亡届の記載事項証明書など)
- 相続人全員の戸籍謄本または家族関係証明書
- 遺産分割協議書(遺言書がない場合)
- 相続人全員の印鑑証明書
- 各金融機関所定の書式
手続きの流れ
- まず故人の口座がある金融機関に連絡し、相続手続きに必要な書類を確認します
- 必要書類を準備し、金融機関の窓口または郵送で手続きを行います
※韓国の公的書類(家族関係証明書など)を提出する場合は、日本語の翻訳文が必要です。多くの金融機関は外国人の手続きに慣れていないため、日本人の相続に比べて時間がかかることが予想されます。
※故人が韓国の金融機関に口座を持っていた場合は、その国の法律に基づく手続きが必要です(次のステップ)。
⑧ 韓国における預貯金の解約
手続きの流れ
- 韓国の法務士に依頼します
- 必要書類を準備し、金融監督院などへ口座照会を行います
- 金融機関の窓口で手続きを行います
⑨ 不動産の登記申請
手続きの流れ
- 司法書士に依頼し、書類を収集します
- 書類が準備できると、司法書士から委任状等が送られますので、捺印して返送します
- 法務局に書類を提出し、およそ1ヶ月程度で手続きが完了します
必要な書類
- 被相続人の出生から死亡までの戸籍・証明書
- 被相続人の住民票
- 相続人の戸籍・証明書(亡くなっている相続人がいる場合は出生までのものが必要)
- 不動産を取得する相続人の住民票
- 遺産分割協議書
- 全相続人の印鑑証明書
- 固定資産評価証明書
3-2. 韓国側で必要になる主な書類
| 書類名 | 内容 | 取得先 |
|---|---|---|
| 基本証明書 | 生年月日や死亡等の確認 | 駐日大使館・領事館、韓国の洞事務所 |
| 家族関係証明書 | 親・配偶者・子の氏名や生年月日等の確認 | 同上 |
| 婚姻関係証明書 | 婚姻歴の確認 | 同上 |
| 入養関係証明書 | 養子縁組の有無の確認 | 同上 |
| 親養子入養関係証明書 | 特別養子縁組の有無の確認 | 同上 |
| 除籍謄本 | 旧制度下の戸籍 | 同上 |
| 在外国民登録簿謄本 | 在外国民の登録をした場合 | 同上 |
| 韓国内の手続き書類 | 登記簿謄本・登記畢情報・納税証明等 | 韓国の裁判所・洞事務所等 |
これらの取得代行・翻訳は当事務所が対応します。韓国内の手続きは、提携先の法務士・弁護士と連携して対応します。
3-3. 在日韓国領事館でできること・できないこと
できること
- 韓国籍の方の死亡申告受理
- 家族関係登録簿の各種証明書発行
- 在外国民登録簿謄本の発行
- 書類の領事認証
できないこと
- 韓国国内の不動産登記(現地の法務士を通じて対応)
- 韓国の相続税申告(現地の税理士を通じて対応)
- 日本の相続手続き(日本の司法書士が担当)
手続きは、被相続人・相続人の国籍、財産の所在、家族関係によって流れが変わります。当事務所が相続人の確定・韓国書類の取得・翻訳から、日本側の登記・解約、韓国側の手続き(提携法務士と連携)までワンストップでお手伝いします。
本ページの流れ・期間は標準的なケースの目安であり、被相続人・相続人の国籍、財産の所在、家族関係等により異なります。韓国国内の不動産登記・相続税申告は韓国の法務士・税務士、訴訟手続きは韓国の弁護士の業務範囲です。当事務所は日韓双方の専門家ネットワークでワンストップ対応します。
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